とざい、とぉざあーいー

澄み切った青空を突きぬけてゆくような、女の子の声が
陽の照りつける、人々あつまる広場に響き渡ります。

_DSC0081.jpg 68.14 KB令和元(2020)年の冬から続いた新型コロナウイルス感染症。
人が集まる各地の祭りは、開催の自粛を余儀なくされました。
感染の大波が来ては引き、引いては波にのまれ…。

昨年2022年、3年ぶりに開催できたかと思ったとき
《山あげ祭りで感染者》
新聞に見出しが躍りました。

周辺の祭りが開催を見送る中で、やっとの思いで開催した祭り。
どんなに悔しかったことでしょう。
冷ややかな視線や非難の声を受けただろうことは、想像に難くないことでした。

ですから今年の祭りは、
『やっと胸を張ってできる』そんな気持ちが
この、子ども歌舞伎の口上や、
演者・若衆・世話役…見に来られた方、みなさんの顔に現れていたように思いました。

那須烏山市・山あげ祭り

栃木県那須烏山市
人口もまばらな山間の静かな街が、この山あげ祭りの日は多くの人で賑わいます。
_DSC0085.jpg 173.56 KB山あげ会館前で行われた、子供歌舞伎
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この街は、平成の大合併で『烏山町(からすやま)』と『南那須町』が合併して生まれた市です。
山あげ祭りは、永禄3年(1560年)烏山城主・那須資胤が牛頭天王に疫病退散を祈願した際に行われたのが起源とされ、以来460年余りの長い年月のなかで、烏山の人々により受け継がれてきました。

烏山といえば、烏山和紙も有名で、宮内庁御用として宮中における歌会始の懐紙に選ばれるほど。
その特徴は楮(こうぞ)を原料に、手すきで作られ、 厚手で紙質が緻密であり、強さと優雅さを兼ね備えていること。
地元の県立烏山高校の卒業証書は、春に卒業生となる3年生自らが工房に紙漉き体験へ行き、製作したものが使われます。

そんな強い和紙が、この山あげ祭りの「山」を支えています。
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大人が飛び乗ってもビクともしない。
「そらぁ烏山和紙で出来てるものっ」と奥様とご一緒に来られたとおぼしきオトーさん。💡😎


山あげ祭り

山あげ祭りの特徴は、
なんといっても街中に仮設の舞台を作り歌舞伎を行う祭りであること。(演目
全て手作りの山は、幅7m・高さ10m以上・奥行き100m。

祭りは市内にある6町の持ち回りで行われます。
舞台装置一式を毎回組み立てて、所作狂言(歌舞伎)や神楽などの余興を奉納し、解体、移動を一日6回程度。全部手作業です。
それを、金(前日)・土(初日)・日(当日)の3日間に渡って繰り返し、町中を巡行します。

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2023.07.24.2223_2.jpg 3.35 MB_DSC0136.jpg 108.03 KB今年の当番町《金井町》


7/23(日)最終日・祭り最高潮

わたしが行ったのは、3日目最終日の午後。
子供歌舞伎が行われるのに合わせて、会場入りしました。
子供歌舞伎が行われる、山あげ会館前には沢山の屋台も出店されています。

この日の最高気温、30.9度
それでも、先週までの熱風吹き荒れる猛暑に比べると、風があって木陰にはいると一息つけます。

しかし、山車(だし)を引き・山を上げ下ろしする若衆は
照りつける日差しの中、浴衣に法被、ねじり鉢巻き。

子供歌舞伎の山がハケ、
しばらくすると、ぞくぞくと町の山車が集まってきました。
_DSC0255.jpg 179.25 KB_DSC0300.jpg 185.76 KB_DSC0322.jpg 170.12 KB_DSC0340.jpg 135.76 KB
やがて、山車をひとところに向き合わせると、
当番町の山車…山車の先頭から1人の若衆が地鳴り声を上げます

これから、ブンヌキを始めたいと思います!!!
どうぞ、、よろしく、お願い、いたし ゃぁすっー!!!!


「ブンヌキとは、各町の屋台が集まって行われるお囃子の競演のこと」だそうです。

山車に乗ったお囃子衆から、祭りばやしの音がせわしなく、 右や左、天や地、前から後ろから!溢れて散らかしてゆきます。_DSC0369.JPG 5.48 MB音に合わせ、体を揺らす若衆たち。
その顔が輝いて見えたのは、炎炎と照りつける太陽のせい、だけではなかったはず。

とてもまぶしく、胸がアツくなりました。
_DSC0366.jpg 960.39 KB_DSC0377.JPG 5.66 MB時間をかけたブンヌキを終えると、次の山を建てる場所へと移るため、練り歩きが始まります。
時間はすでに16時30分。

遠方からの観光客は少なくなり、本格的な地元の時間です。
_DSC0402.jpg 642.41 KB_DSC0406.jpg 571.58 KB_DSC0417.jpg 998.84 KB練り歩きには、栃木県警のほか、警備会社の警備員も道路規制や車誘導に。

交差点には案内テント。観光協会か市役所の方でしょうか…交代で案内してくださってる様です。

町内の酒蔵では、店前に酒造りで使う清水を振る舞い、熱中症対策。
スッキリとした冷たさに救われます💧✨

街中総出で祭りは盛り上がり
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_DSC0413.jpg 704.94 KB次の演目が18時、そして20時。
居ようとすれば出来なくもなかったのですが、何年かぶりの汗が背中を流れる体験をした日でしたので、帰路に。

きっと来年こそは、準備万端で来ようと思ったのでした。
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✍️余談ですが、市内の県立烏山高校には《烏山学》というカリキュラムがあります。
学年別に学びの深さに違いはあるようですが、生徒たちは準備の段階から山あげ祭に関わります。
そして、2、3年生は当日の祭りにも。終えたあともレポートをまとめる等して学びを深めて行きます。

本人たちは大変そうですが、貴重で、面白そうで。大人のワタシは、ちょっと羨ましい気がしています。
(炎天下はチョット✋😅ですけど💦)